煮物のレシピを開くと、ほとんどに「砂糖 大さじ1〜2」と書いてあります。
白砂糖を控えたいと思っても、煮物だけは別。抜いてみたら、なんだか味がぼやけて、しょうゆの味ばかりが目立つ。長年作ってきた「いつもの味」から離れるのが不安で、結局また砂糖を入れてしまう。そんな方は多いのではないでしょうか。
でも、煮物の甘みは砂糖からしか出せないわけではありません。精進料理のように砂糖を使わずに作る煮物もありますし、甘みの出どころは、みりん・野菜・だしと、台所にいくつもあります。
私は白砂糖を家に置かない暮らしをしていて、料理に甘みが欲しいときは、白砂糖以外のもので足しています。この記事では、煮物で砂糖が何をしているのか、そして砂糖なしで甘みとコクを出す方法を、分量の目安つきでお伝えします。
読み終わるころには、砂糖を抜いたときに「何が足りなくなるのか」がわかり、自分の家の煮物をどう直せばいいか、見当がつくようになるはずです。砂糖をやめても、煮物はあきらめなくて大丈夫です。
煮物の砂糖は「甘くするため」だけではない
砂糖を抜いて物足りなくなるのは、砂糖が煮物の中で、いくつもの仕事をかけもちしているからです。
| 砂糖の役割 | 抜くとどうなる |
|---|---|
| 甘み | しょうゆの塩気がとがる |
| 照り | 見た目が白っぽく、薄そうに見える |
| コク | 味に厚みがなく、水っぽく感じる |
つまり、砂糖を抜いたあとに補うべきものは「甘み」だけではありません。甘み・照り・コクを、それぞれ別のもので埋める。 こう考えると、置き換えがぐっと楽になります。
砂糖を抜くと物足りない、3つの理由
1. 「甘辛」の「甘」だけが消える
和食の煮物の多くは、しょうゆの塩気と砂糖の甘みを組み合わせた「甘辛」の味つけです。
ここから甘みだけを抜くと、残るのはしょうゆの塩気です。同じ量のしょうゆでも、甘みがないとしょっぱく、角が立って感じられます。
砂糖を抜いたら、しょうゆも少し控える。 これだけで、「しょっぱいだけ」の失敗はかなり防げます。
2. 照りがないと、味まで薄く見える
砂糖は煮詰めると、つやが出ます。煮物の照りは、ほとんどが砂糖のおかげです。
照りがないと、見た目が白っぽくなり、食べる前から「味が薄そう」と感じてしまいます。人は目でも味わっているので、実際の味以上に物足りなく感じることがあります。
3. 舌が「いつもの味」を覚えている
何十年と作ってきた煮物の味は、自分にも家族にも、しっかり刻み込まれています。
そこから急に甘みが消えれば、違和感があるのは当然です。物足りないのは、失敗ではなく、慣れの問題であることも多い。 少しずつ減らしていけば、舌のほうが追いついてきます。
砂糖を使わずに甘みとコクを出す方法
1. 本みりんを使う
砂糖の代わりに、まず頼りになるのが本みりんです。
本みりんは、もち米と米こうじを焼酎に漬けて熟成させたもの。もち米のでんぷんが分解されて、やさしい甘みになっています。砂糖のようにとがった甘さではなく、まろやかで、照りも出ます。
ここで気をつけたいのが、似た名前の商品です。
| 本みりん | みりん風調味料 | |
|---|---|---|
| 甘みのもと | もち米 | 水あめなど |
| アルコール | 約14% | 1%未満 |
| 表示の見方 | 「本みりん」 | 「みりん風」 |
みりん風調味料は、水あめなどで甘みをつけたもので、本みりんとは中身が別物です。砂糖を避けたくて選ぶなら、ラベルの「本みりん」の文字を確認してください。
甘さの目安は、本みりん大さじ1で、砂糖小さじ1くらいとよく言われます。砂糖大さじ1を置き換えるなら、本みりんは大さじ3が目安です。ただ、その分だけ水分も増えるので、だしや水を少し減らして調整します。
2. 甘みの出る野菜を、先に、弱火で
玉ねぎ、にんじん、かぼちゃ、さつまいも、長ねぎ。こうした野菜は、じっくり火を通すと甘みが出てきます。
コツは2つです。
- 甘みの出る野菜を、ほかの具より先に鍋に入れる
- 強火で一気に煮ず、ふたをして弱火でじっくり
たとえば肉じゃがなら、玉ねぎを先に炒めて、しんなりするまで待ってから、ほかの具を入れる。これだけで、煮汁の甘みが変わります。
野菜を少量の水と塩で蒸し煮にする「重ね煮」という方法もあり、砂糖を使わない煮物の作り方として、よく紹介されています。
3. だしのうま味で「足りなさ」を埋める
砂糖を抜いたときの「何か足りない」は、甘みではなく、コクが足りないことも多いです。
そこで効くのが、うま味です。
- 昆布を煮汁に入れておく
- 干ししいたけを戻し汁ごと使う
- 鶏肉や豚肉を先に焼いて、うま味を煮汁に移す
うま味がしっかりあると、甘みが少なくても、味に厚みが出ます。甘みを増やす前に、まずだしを見直してみてください。
4. それでも足りなければ、アガベシロップを少し
私が料理で甘みを足したいときに使うのは、アガベシロップです。液体なので煮汁にすぐ溶け、加熱しても味になじみやすいので、料理に使いやすいと感じています。
アガベシロップは甘みが強く、白砂糖の約1.3倍と言われています。砂糖大さじ1なら、アガベは小さじ2が目安です。
ただ、アガベシロップの主成分は果糖で、カロリーは砂糖とほぼ同じです。体に入れば糖であることに変わりはないので、「砂糖じゃないからたくさん使っていい」わけではありません。みりんと野菜で出しきれなかった分を、最後に少しだけ。そのくらいの位置づけがちょうどいいと思います。なお、アガベのカロリーや果糖については、アガベシロップは太る?知っておきたい本当のところで詳しく書いています。
置き換えの目安(砂糖大さじ1の場合)
| 置き換えるもの | 分量の目安 | ひと手間 |
|---|---|---|
| 本みりん | 大さじ3 | 水分を少し減らす |
| アガベシロップ | 小さじ2 | 最後に味見して加える |
| 甘みの出る野菜 | 具の一部に | 先に入れて弱火で |
どれか1つで全部をまかなう必要はありません。みりんで半分、野菜で残り、足りなければアガベを少し。 組み合わせるほうが、砂糖に近い、角のない甘さになります。
よくある質問
本みりんのアルコールは大丈夫?
煮物のように、しっかり煮立てる料理なら、アルコールの多くは飛びます。ただ、完全にゼロになるわけではありません。お酒に弱い方や、小さな子どもが食べる場合は、先にみりんだけを鍋で煮立てて、アルコールを飛ばしてから使う「煮切り」をすると安心です。
みりんにも糖が入っているのでは?
はい、入っています。本みりんの甘みも糖です。
砂糖を使わない煮物は、「糖がゼロの煮物」ではありません。白砂糖を足さずに、素材と発酵の甘みでまとめる煮物です。この違いを知っておくと、「みりんを使ったら意味がない」と迷わずにすみます。
家族に「味が薄い」と言われたら?
いきなりゼロにせず、まず砂糖を半分にするところから始めるのがおすすめです。
半分にして、足りない分をみりんと野菜で補う。家族が気づかなければ、次はもう少し減らす。長く食べてきた味ほど、急に変えると反発されやすいので、家族にも舌の準備期間をあげるつもりで進めると、うまくいきやすいです。
照りが出ません
最後に火を少し強めて、煮汁を煮詰めながら具にからめてください。本みりんを使っていれば、煮詰めることで、つやが出てきます。盛りつけるときに煮汁を上からかけるだけでも、見た目の印象が変わります。
かぼちゃの煮物にも、みりんは必要?
かぼちゃやさつまいもは、それ自体に甘みがあるので、だしとしょうゆ少々だけでも十分おいしく煮えます。まずは何も足さずに作ってみて、足りなければみりんを加える、という順番にすると、素材の甘さに気づきやすくなります。
まとめ
- 煮物の砂糖は、甘み・照り・コクの3つの仕事をしている
- 砂糖を抜いたら、しょうゆも少し控える
- 甘みは「本みりん」で。みりん風調味料と間違えない
- 玉ねぎやにんじんを先に入れ、弱火でじっくり甘みを引き出す
- コクは昆布・干ししいたけ・肉のうま味で補う
- 足りない分だけ、アガベシロップを少し
- 家族の分は、砂糖半分から少しずつ
長年作ってきた煮物は、家族の思い出そのものです。砂糖を抜くことは、その味を捨てることではなく、甘みの出どころを入れ替えることだと思っています。次に煮物を作るときは、砂糖を入れる前に、玉ねぎを一つ多めに鍋に入れてみてください。
▶ あわせて読みたい:てんさい糖・きび砂糖・アガベの違いと使い分け
煮物以外の料理やお菓子では、どの甘味料をどう使い分けるか。台所に置く甘みを選ぶときの参考に。
▶ あわせて読みたい:砂糖をやめたのに変わらない?隠れ砂糖のこと
煮物の砂糖を抜いても、市販のたれやつゆに入っていることがあります。原材料表示の見方はこちらで。
※この記事は私自身の体験をもとにしたものです。
体質や体調には個人差がありますので、気になる症状がある場合は
医師や専門家にご相談ください。


コメント